Monday, November 17, 2014

贅沢な朝食

自家製のパンにバター、ただ切っただけの野菜。

それに挽きたてのコーヒー。

なんて贅沢な朝食だろう。

この家では、ミャンマーの奥地から、
ロシアから、そしてタイからやってきた三人のお手伝いさんたちが、それぞれ、パンを焼き、バターを作りコーヒーを挽く。

ミャンマーではエレベーターすら見たことがなかった、というメイドは
いまでは、パンはもちろん、西洋のおしゃれなケーキも上手に焼くようになった。
売れないモデルでもある、ハンサムなロシア人青年は
その太い二の腕で器用にコーヒーを挽く。

なんだか、とても贅沢な朝食だ。

となりには北欧の某国の大使館があって。
そこにはとてもヒステリックな奥様が住んでいて、何人もの使用人を叩き出す、というけれど、高い塀に囲まれた向こう側のことは想像するしかない。

そうだ、となりの家のこともわからないんだから、
ましてこの街のこと、隣の国のこと、世界のことなんて
想像するしかないのだ。

とにかく、こいつはとても贅沢な朝食だ。

Sunday, November 2, 2014

ポジティブちゃん


風の気持ちの良い夕方、部屋の空気を入れ替えようと少し窓を開けたら、ポジティブちゃんが飛び込んで来た。

あわてて逃がそうとしても どこにも行こうとしない。

どうやら迷いポジティブちゃんらしい。

よく見ると怪我もしている。

そのせいで、おそらく目測を誤って俺の部屋に飛びこんできたのだろう。

まあいいさ、ポジティブちゃんは幸せを運ぶっていうし。

しばらく部屋に置いておこう。

そう思って、手近にあったダンボール箱で簡単なケースを作り、ポジティブちゃんを入れてやることにした。

ポジティブちゃんが部屋に来たその日のこと。

大通りで車にはねられて、足の骨を折った。

「これで、慰謝料大もうけポジ!」

ポジティブちゃんは元気に鳴いた。

その通りだ。なんてラッキーなんだろう俺は。

一週間後、ささいな言い合いがきっかけで 彼女が家を出て行った。

「これで新しい女を作れるポジ!」

ポジティブちゃんは高らかにそう鳴いた。

その通りだ。なんて俺はラッキーなんだろう。

そのころには、ポジティブちゃんは傷も癒えたのか、少しだけ、 大きくなったように見えた。

それからというもの、嘘みたいにラッキーが続く。

すばらしく芸術的な絵をローンで買うことができたり、

電車で痴漢に間違えられて、 生まれて初めてパトカーに乗ることができたり。

しまいには、友人の借金の保証人になっていたために 貯金通帳は空になり、家財道具まで全部持って行ってもらうことができた。

何もなくなった、がらんとした部屋で、

「これで泥棒の心配は要らないポジ!」

と、ポジティブちゃんはひときわ元気に鳴いた。

うんうん。ほんとうについてる、ラッキーだ。

 そのころにはさらにポジティブちゃんは大きくなり、もうそのくちばしは猫や犬くらいならひとのみできるんじゃないかと思うくらいのサイズになっていた。

さすがに大きくなりすぎた。

そろそろ逃がしてやらなくちゃ。

自由な空へ。

そう思って俺はポジティブちゃんを箱からだそうと手をかけた。

そこで俺の記憶はぷっつりと、途切れた。。。。。。。

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男がポジティブちゃんのおりを開けようとしたその途端、

ポジティブちゃんはぐわっと突然大きな口を開け、男を丸呑みにした。

「うふふ。僕は君をたくさん幸せにしたよ。さあ、次の人にも幸せを運ばなくちゃ。」

とポジティブちゃんは独り言をいうと、窓からどこかへ飛び出して行った。

仕事もくらしもひとそれぞれ。(ハノイ)



マーク・ザッカーバーグを二回りくらいハンサムにした感じのフランス人、ベン。

フランス、スペイン、アイルランド、マルタ共和国で働いて今ベトナムにいる。
なんで、そうなったの?というと、

「うーん、彼女が転勤多かったからなあ。。。」

ああ、そうか、そういう理由もあるよね。

でも、そういう風に生活に合わせて仕事をころころ変えられるのって、
とても大事なことだよね。

大事なものがなにかというのも人それぞれだし。

でもさ、日本だとそんな風には簡単に仕事はやめられないんだ、
一つの会社に一生勤める人も居るくらいだよ。

「ああ、ヨーロッパでもね、俺たちの親の世代はそうだったよ!でも、今はそんな人、ほとんどいないよ。」

なんてことを、ベトナム名物の春巻き料理をつまみながら
のんびりした口調で話したベンもいつのまにか、
世界に12人の従業員をもつ、WordPressのプラグイン会社経営。

ま、仕事もくらしもひとそれぞれ。

Monday, October 20, 2014

米軍はこの町に爆弾を落とさなかった (ハノイ)

「米軍はこの町に爆弾を落とさなかった。」

実際のところ、落とさなかったのか落とせなかったのかは知らないがまあとにかく、ベトナム戦争の北爆からこの町は焼け残った。

ここはホワンキエム湖北部のハノイ旧市街。

そのおかげで、この一角は、中国風の旧市街と、フランス植民地時代の名残りをのこした穏やかなたたずまいの町となって、今に残る。

街角には居心地のよいカフェも多く、小さな通りに面した2階のテラスに立ち寄るのが最近の日課だ。 ベトナムの人々と話す話題は大きく二つ。

「尖閣諸島はどうなってるか?」

ということと、

「最近の日本からの客は年寄りばかりだね」

ということだ。

この国の平均年齢はぐんと若く、27歳だ。 でも、それは40年前のベトナム戦争で多くの国民が死んだから。


「米軍はこの町に爆弾を落とさなかった」が、人々の頭の上には容赦なく爆弾を落とした。


結果この国の平均年齢は27歳になり、この一角にだけ百年の町並みが残った。

ベトナムと日本には40年の時差がある。

人口構成的には日本の1970年代とほぼ同じ。

多くの国民が亡くなった第二次世界大戦から、30年経った1970年代。

日本は毎年10%、20%もの驚異的なGDP成長を記録している。

この国がそうなるかはしらないけれど、平均年齢44歳の国から来ると違和感があるくらい、町も公共の乗り物も、レストランも活気と若者であふれている。

数十年後、日本のように、米軍が落とした爆弾のことは誰も語らなくなり、この国はいまよりもずっと経済発展を遂げているのだろうか。

そのとき、百年の町並みの一角にこのカフェはまだ、残っているのだろうか。

Sunday, October 19, 2014

湖の町に雨が降って (ハノイ)

湖のほとりに雨が降ると、あたり一面が完全に水で閉ざされて、 なんだか自分もすっかり水の中の魚のような気分になる。 

服も髪も濡れているのがそもそも自然なのかもって気がしてくる。 

周りを行く人たちもたぶん、魚かカッパかなにかのたぐいだろう。 

だとしたらさしずめ俺はカエルあたりで、あの水しぶきを上げて走る人力車はのおじさんはアメンボだろう。

 そんな水の中でタクシーを止め、まだ服も乾かないまま、五分ほどでおりる。

 「このビルはシンガポールに比べると家賃は3分の1だよ。でもほら、すごくゴージャスだろ?」

 と、チェンが言ったそのビルは、たしかにピカピカでゴージャスだけど、 水に埋もれた町の中にどこか不釣り合いな感じで無愛想につったていて。 

乾いたロビーに一歩足を踏み入れると、 濡れスーツのカエル男としては、急に居心地の良い井戸の中から表に放り出されたようななんともいえない気持ちになったのである。 

さ、仕事だぜ。

 せめて人間に戻って服と髪くらいはびしっといかなくちゃね。

Sunday, September 14, 2014

人は悲しいくらい忘れていく生き物だけど、音楽はわすれてくれません (日記)

「人は悲しいくらい忘れていく生き物だから」

 。。。。。。。 

そんな風に思っていた時代が私にもありました。 

ええ、でも別に恋愛とかの話とかじゃありません。 
音楽の話ですよ、音楽の。 

最近はどうですかyoutubeやらspotifyやらで 過去の曲が山のようじゃないですか

。 。。。。いつまでも忘れてくれやしないじゃないですか。 
あなた達が忘れないことで、 音楽家は新しい曲が作れないのです。 

もう新しい表現なんてないんじゃないの? 
どうせなにかの焼きなおしになっちゃうでしょ。

 そう思ってしまうのです。 
でもそうなんです、クリエイティブって基本積み重ねだから。 

ゼロから物を生み出すことなんて普通できやしません。
 過去のなにかの積み重ねです。 
過去の積み重ねから、かろうじて新しい要素をひねり出すしかないのです。

数十万、数百万、の楽曲にワンクリックで手の届く時代 あたらしい表現ってどこにあるというのですか。 
そりゃあなた。100曲目、1000曲目くらいを作った人はまだまだ楽でしたでしょうよ。

数百万一番目の曲に価値を見いだすのはそれよりもずっとずっと難しいのです。 
過去の数百万曲になかった価値をどうやったら見いだせるというのですか。 

だからお願い。

忘れてくださいよ。


お願いだから、過去のことは忘れてくださいよ。


もう今日は作曲はやめて、昔の忘れ去れることのない名曲でも聞くことにしますよ。 

ええと、なんだっけ、あれ、あれ、 

てれてれてれてれ てれてれてれてれってイントロの 

息ができない、みたいなやつ。 

おまわりさん!みたいなバンド。 

あれ、忘れてしまったな。。。。

俺は悲しいくらい忘れていくいきものだ。

Saturday, September 6, 2014

スコールと無愛想なマイケル(バンコク)


夕方からスコールになって。
気温は幾分涼しくなったけれど、前の道は川になった。

これで、しばらくはここに閉じ込められることは決定だ。

良いことと悪いことはたいていこうやってセットでやってくる。

そーいうものなのだ。

今週はなんだかんだとやることが残っていて。

土曜日なのに朝から仕事場にくるはめになった。

今日は誰も来てないかな、と思ってたらマイケルが来てた。

ああ、そうだ。

こんな日も仕事するのなんて日本人とドイツ人くらいだよな。

きっと明日世界が終わるとしても、僕らは仕事をしているのだ。

な、そうだよな、俺たち頑張り屋だよな、

とすこしシンパシーを感じながら、向かいの席に座ると、

マイケルは画面からほとんど目をはなしもせず、

hi と軽く挨拶だけして、またPCに向かっていた。

。。。。。つれないやつめ。

午後にはぞろぞろと、何人かが姿を見せた。

weekendということでなんとなく緊張感も少なく、仕事したり、くっちゃべったり、だらだらと日がすぎる。

話題は新しいサイトの話、これからプレゼンにいく国の話、

テクノロジーオタク同士の話題なんてまあ、基本決まりきったものだ。

そうこうしてる間に、スコールのせいで道はすっかり川になっていて。

夜になって、190cm近い巨漢に人懐っこい笑顔をくっつけた、まるで漫画のキャラクターのようなピッポが、車を出すから飯をくいにいこうということで、マイケルや、タカらも含め10人ほどで日本料理屋へ向かう。

マイケルは何一つ日本のことに興味がないらしく、「天ぷら」ですら知らないらしい。

なぜかお好み焼きがピザらしいということは何となくわかっているようだけど、その程度だ。

まあ、俺もよく考えたらドイツのことは対して知らないもんなあ。

さあ、何はともあれ日本料理だ!と思って、楽しみにしてたら、着いたところは吉野屋みたいなU字型になったカウンタータイプの牛丼屋。。。。。

まあ、まずくはないけれど、やっぱりちょっと味気ない。

そもそも大勢で飯を食う場所じゃないしなあ。。。。。

すると、日本の店はたいていこうなのか?

と日本音痴のマイケルが素っ頓狂なことを聞いている。

うん、そうだ、この方が早いし店員が少なくてすむからね、となんとなく誰かがテキトーに答えてる。

その後も、温泉卵の食べ方だなんだに大騒ぎをしたりしつつ。

まあなんだかんだだらだらと楽しい一日だったな、と思いながら、マンションに帰ると、緊急のメールが入っていて。

あらら、日曜日も仕事をしなきゃならなくなっていた。

そうか、

良いことと悪いことはたいていこうやってセットでやってくる。

そーいうものなのだな。

Thursday, July 17, 2014

完璧主義者と適当主義者

適当っていい言葉だな〜

いい加減にって意味もあるし、ちょうどよくっていう意味もある。

以前から、どうしてもすぐ完璧を目指しちゃうのは、自分の、ひいては日本人全体の悪い癖だと思ってた。

こんな完璧なレポートは本当に必要か?

こんな完璧な接客を、どうして求める?

いつも立派な人がたった一つミスを犯したとき、どうしてこんなに責める?

変に完璧を目指して、自分たちで自分たちを縛り付けてしまう。

みんながみんな完璧主義を目指して、それぞれに無理をしている。

それこそが日本社会の最大の問題点なのだ

そうだ、「完璧主義」は大変だから、「適当主義」がいい。

みんなが適当なくらいでいけば、きっと仕事のストレスも減るし、残業も減る、人間関係もうまくいく、世の中全体が上手に回るはずだ。

そんなに完璧なものが必要なときなんて、ほとんどないはずなんだ。

よし。肩の力を抜いて、適当にいこう!!!

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。。。。。ううむ、よく考えたが、やはり「適当」はすばらしいな。

こうなったらこの「適当」をきちんと広めたい。

そうだ、政治家になって、てき党を作るのだ。

そして、みんなが「適当」に過ごせるための政策を作ろう。

サービス残業は禁止、過度の接客要求も禁止だ、ゆとり教育よりも適当教育だ。

きっとみなに喜ばれるぞ。

それでも適当にやらないやつは、牢屋に放り込もう。

完璧を求めるやつはしばり首だ。

適当じゃないやつは許さないぞ!

てき党万歳! てき党万歳!

完璧主義者に死を!!

世の中を「完璧に適当主義」にしてやるのだ!!!

。。。。。。。

ああ、、、なんにでも完璧主義を求めるのが悪い癖だったっけ。。。。

Tuesday, July 15, 2014

アスファルトの花

学生の頃、友人と

「どんなことでうれしくなったりする?」

みたいな話になった時に

「うーん、道ばたのアスファルトの隙間から花が咲いているのをみたときとかかな。


大変な場所なのに、一生懸命咲いててすごいなーってうれしくなるよね。」

って応えたヤツがいて。

うわっ、なんてベタな答えなんだ!!!


そんなことでうれしくなるなんて、アホか、どんだけピュアなんだよ(笑

と、そのときは笑い飛ばしてしまったんだけど、

いまその彼は、とある途上国で

教育を広めるような仕事をしていて、彼の活躍を見ると、

まるでアスファルトの隙間から花を咲かせる仕事みたいだな、

と、僕がうれしくなってしまっているのです。

Tuesday, July 8, 2014

自衛のための拳法を。

あれは、アフリカ大陸に位置する国スーダンへ出かけたときのことだった。

ある村で男がいう、この国には伝統的な拳法があるのだそうだ。

そんなものがあるのか、ならばぜひみせてくれ、というと、

男は、今は見せられない、という

曰く、これは、仲間の村の村人が攻撃されたときしか使うことのできない拳法だからだ、というのだ。

この拳法は男の村と同盟を結んでいる隣村の村人が他の村の者に攻撃された時だけ使うことができるのだという。

これこそが、友情の証だ、と男は得意げに笑った。

それにな、隣村の皆はとても強いんだ。

隣村を攻めようなんて思うやつはいない。

だから、その拳法も使われることはないよ。

おかげでこのあたりでは喧嘩なんて一度も起きたことはないんだ。

と男はいった。

うむ。たしかにその通りだ。

隣村は強いばかりでなく、非常に優秀な村長がおさめていて、規律正しく暮らしていた。

この村で乱暴をしようなんてものは誰もいないに違いない。


そして、それから数年後、またスーダンに行く機会があった。

あれから、村はどうなったのだろうか。

気になった僕はまた同じ男を訪ねて話を聞いてみた。


僕は、男を一目見ておどろいた。彼の顔中はいたるところ殴られたあざだらけだったのだ。

彼がいうには、

あの後、高齢だった隣村の村長が死に、長男が後をついだ。

だが、長男は、聡明だった父親とは違い、まったくのごろつきだった。

違う村のやつらだとみればすぐに喧嘩を吹っかけたのだ。

そうしたある日、ついに堪忍袋の尾が切れた他の村の村人たちは
隣村に殴りこみをかけたのだ。

そうなってくると、同盟をしている男の村も喧嘩に加わらざるを得なくなり、ひどく大きな殴り合いになったのだという。

そうして、男もあちこちけがをしてしまったのだという。


なんてことだ。あのときはすばらしい決めごとだと思ったのに。
村長がかわっただけでこんなことになってしまうなんて。


「それがどんなに正しいつもりでも。
力というものは一度暴れだしてしまうと、とめようのないものなんだ。


だから力を持った者は注意深く、
本当に注意深くその力を使わなくてはいけないよ。



言葉を失った僕をみて、たんこぶで目を腫らしたまま男はそういった。

そういえば、あの拳法の名前はなんだっただろうか。。。



ああ、そうだ。

スーダン的自衛拳

というやつだ。

Monday, July 7, 2014

バターフライの及ぼす健康被害とは


ニュースを見ていたらこんな記事が目に入った。
米国には、バターを揚げた「バターフライ」というひどい食べ物があるらしい。

断言しよう。
こんな油分だらけのものを食べていたら、当然健康に被害はでるし、そのために、米国の医療費はさらに高騰する。
そして、日本との差はより大きくなるだろう。

そのために、医療費の値上につながる混合診療を米国は日本に強要し、日米の差を縮めようとするだろう。

混合診療はいわばTPPの一部であり、TPPの条約は、さらに、日本の農業に影響を与え、最終的に地方の経済減退を呼び起こす。


このように一見関係のないもの同士が、実は影響し合っていることをバターフライエフェクトという。

Sunday, July 6, 2014

七夕物語と羽衣伝説

今日は七夕ですね。

七夕といえば織姫と彦星の物語。

このエピソードは本来中国の古典に端を発するものなので、似たようなものは中・韓・日・ベトナムなどにもあります。

ところが日本以外の国では、「羽衣伝説」とごっちゃになっているケースがあります。

「羽衣伝説」といえば、天の羽衣を持って空からおりてくる天女に地上の男性が恋をする物語。

たとえば、ベトナムの七夕物語では彦星は「牛飼い」で、たまたま水浴びする天女を見てしまい、羽衣を拾って恋に落ちる、というストーリーになっています。

七夕物語は東アジアのみに伝わるものですが、羽衣伝説は世界中に、それこそアラビアンナイトの中にも出てくるように、あちらこちらにあります。

そして広く広まっているだけに、もろもろ亜流が存在し、、、たとえば、遠くイギリスまで至ると、羽衣のかわりに天女が「アザラシの毛皮」を落としていく、というストーリーになっていたりします。

と考えると、ベトナムの例は土着の物語の七夕の物語と、ワールドワイドな羽衣伝説が混ざった亜流の一つといえるかもしれません。

そんな中、日本は羽衣伝説と、彦星と織り姫の話がきちんともとに近い形で別々になって残っている珍しい国。

これは、日本がシルクロードの端にあって、中国文化圏からも、アラビア文化圏からも、程よく遠く、程よく近かったからなのかもしれませんね。

あいにく本日の日本は雨のようですが、前述の通り七夕物語は東アジア全域にありますので、どこかの天の川はきっと晴れでしょう。ご心配なく。

Tuesday, July 1, 2014

チャイティーと夢の話

毎朝立ち寄るいつもの喫茶店。
僕の顔を見ると、「いつものですね」とチャイ・ティーを出してくれる。

顔なじみの女性店員がいう。

「わたし、今月でここのバイトやめるんです、就職が決まったので。
介護の仕事なんです。」

「へー、そうなんだ、それはよかったね。」

「本当は、音楽関係の仕事をしたかったんですが、
なかなかそうもいかなくて。でも、がんばります!」

「うん、そうだね。これからきっと必要とされる仕事だしね。」

彼女は僕が音楽をやっていることは知らない。

ただ、一人の客に自身の夢の話と現実との話を教えてくれただけ。

それ以上の事情は知らないけれど、ひょっとしたら、彼女はすごくそうしたくて就職する訳じゃないのかもしれない。

でも、好きなことをやることと、自分のやることを好きになること、

どっちにも多分正解があるから、がんばってほしいな。

と、そんな風におもったのでした。

Monday, June 16, 2014

犬と神様


「あれ?ここはどこ?」


一匹の犬が周りを見回しながら言いました。


白く奇麗な毛並みの、それでいて鼻だけ真っ黒で愛嬌のある犬です。


「おお、気がついたか、ここは天国じゃよ。そしてわしは神じゃ」


答えたのは杖を持った白髪のおじいさん。どうやら、神様のようです。


「えーおじいさん神様なの!

すごいね!あれ、じゃあ・・・、ひょっとして、僕は死んじゃったってこと??」


「うん。まあ、そういうことじゃ。。。。

じゃが、15年も生きたんじゃし、充分寿命を全うしたと言えるじゃろ。」


「'じゅみょう'ってなに??

よくわかんないけど、そうかー僕は死んじゃったのかー!

びっくりしたなあ、もう!

あ、あそこに、ご主人様がいるね、僕を見て泣いているよ。

ご主人様、そんなに悲しまないで!僕はここにいるよー!」


犬は雲の上から主人を見つけ、そう言いますがもちろん主人には届きません。


「さて、残念じゃが、お前の主人とももうすぐさよならだ。

お前は天国へ行かなくちゃいけないんじゃよ。

ところでどうだ、お前の一生は幸せだったかい?」


神様がそう聞くと、犬は盛大にしっぽを振りながら答えました。


「うん、とっても幸せだったよ!

だってずっと、ご主人様と一緒にいれたんだもの!

生まれてすぐ僕のことを拾ってくれて、それからずっとだよ!

毎日一緒に散歩して、たくさん遊んだよ!!」


「そうか、それはよかった。

しかし、お前たちは不思議な生き物だのう。。。

妙にまっすぐで、愛情に決して見返りを求めようともしない。。。」


「え、’みかえり'ってなに??なんのこと?」


神様は少し考えて答えました。

「見返りというのはじゃな、、、、

うーん、たとえば、人間同士の場合、夫婦でも家族でもな、愛情にはそのお返しを求める物なんじゃよ。

これくらいやってあげたから、相手ももっとこうしてくれるべきだ、みたいにね。

最初は誰もそんなこと考えないんだがね、次第に、心もどんどん贅沢になって、いろんなことになれっこになっていって満足できなくなるんだ。

それで、喧嘩したり、せっかく育っていた愛情を台無しにしてしまったりするんだよ。」


「ふーん、そうなのかー。

人間ってなんだかややこしいんだね。

僕、難しいことわかんないや。

だって犬だから!!

でもね、神様。

僕はやっぱり犬で良かったよ!

だって、難しいことを気にしないで、大好きなご主人様とずっと一緒にいられたからね!」


そう言って、犬は、さらに続けました。


「あ、でも、ひとつだけ残念だな、15年って僕にとっては一生なんだけど、
ご主人様にとっては、ほんの一部分なんだよね。


ほんとは、もっと一緒にいられたら良かったのに。。。。。」


「うーむ、そうじゃな、まあ’寿命'というやつが違うからな。。。

それは、いたしかたあるまい。

まあでも、またすぐお前は、下界に戻って生まれ変わることになってるんじゃよ。」


「え、そうなんだ!

またすぐ生まれ変われるんだね!

次、僕は何になるの!?」


「それは天国ではあかせない約束なんじゃ。

さあ、行っておいで、また幸せになることをいのっておるよ」


「うん、ありがとう!!」


そうして、犬は天国から、また生まれ変わるために下界に下りていきました。


‘ご主人’はこんどもまたやっぱり鼻だけ黒い愛嬌のある別の犬を飼いだして、一緒に暮らすことになります。

それは、犬が天国から下界に下りていって、すぐのことでした。


Thursday, June 5, 2014

星の王子様たち

星の王子様はいいました。


「大切なものはね、目には見えな・・」


突然、王子の言葉を遮るように、隣の王子がやおら立ち上がり、机をドン!と叩くと、 


「まったく、その通りだ!」


そして、大きな声でこう続けました。


「大切で目には見えないもの、それはつまり権力だよ、権力!

俺が右を向けと言えば、人々は右を向く、

左を向けと言えば左を向く!

この快感といったら!これこそが大切な物なんだ!」


この王子様は、ピョンヤン星の王子様。

そう、彼も星の王子様なのです。

そして、今この場は、いろんな星の王子様が集まった星の王子様会議の真っ最中なのです。

するとまた他の星の王子様が立ち上がりました。


「いや、そうじゃない!!!大事なものは金だ!

金にきまってるだろう。権力なんて金さえあれば手に入るんだぞ!」

とウォールシティ星の王子がいいます。

「いや、そうじゃない、権力よりも人を熱狂させる目に見えないもの。

それは『宗教』だ!」


といったのは砂漠ばかりの星からきたスルタン王子です。


「何いってるんだ、そんな物が大切なもんか!大切なのは権力だ!軍隊だ!」


「いや!金だ!!」


「違う、宗教だ!」


「。。なんだと!!」


「おまえこそ!!!」


こうなってしまっては、会議は、もう収集がつきません。

興奮した三人はつい殴り合いを始めてしまいました。


「いてえ!、もうお前の星とは戦争だ!」


そして、この争いが発端となり、十年に及ぶ宇宙戦争が始まったのでした。

戦争はすべての星を荒廃させ、文明は滅び、それぞれの王子達は失脚し、もはや星の王子様ではなくなってしまいました。

いまはどこでどうしていることやら。

荒れ果てた星の上で一人生き残った、星の王子様はつぶやきました。


「大切な物は目に見えないんだよ。。。

そういえば、平和ってのも目には見えなかったったよね。」

Wednesday, May 21, 2014

家庭用NASサーバ購入しました

家庭用NASサーバ購入しました。とりあえずRaid5で運用してみることにします。

ReadyNas104

NASとかRaidとかいってもなじみが無い方も多いと思うので、ちょっとマニュアルを見てみましょう。。。

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「NAS」とはコンピュータネットワークに直接接続して使用するファイルサーバです。本機では予備のものを含めハードディスクを複数台組み合わせることで、ディスククラッシュ時の安全性をより高める「Raid5」構成を標準としています。

なくしては困るファイル、貴重なファイルなどの保管場所としてお使いください。ご自身で作成されたアーカイブ、写真、動画、作品ファイルなどはもちろん、預金通帳、遺言状、実印、ペットなどの保管にも最適です。

友情、恋愛、人間関係等を貯蔵することも可能ですが、それらは非常に壊れやすい為、予備のディスクをもう一台追加し、より安全性を高めた「Raid6」構成をお勧め致します。

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とのことです。やっぱRaid6にしようかな。。。。

Monday, May 5, 2014

G線上のアリアはオーパーツか

バッハの有名な曲「G線上のアリア」

誰もが一度は耳にしたメロディの名曲だと思うけど、前から不思議に思っていることが有る。

この曲は「キャッチー過ぎる」のだ。

7度を多用した、半音の進行やメロディ、どれをとってもバロック時代の作品とは思えないくらい

「キャッチーさ」に満ちている。

有名なクラシックの代表曲と言えば、基本、古典派から〜ロマン派といった感じで、1800~1900年くらいのものが多い。

ベートーベンやモーツァルト、ブラームスやドビュッシー、今でもCMや街角などで耳にするクラシックの音楽はだいたいこの時代だ。

この時代の音楽は現代人にも耳障り良く響くし、コード進行も和声も現在のロックやポップスとさほど変わりがない。

現代に通ずる「キャッチーさ」が形成されたのはこの時代であると言ってもいい。

ところがバッハが活躍したのは1700年代前半。バッハは1685年生、ベートーベンは1770年生まれなので、ほぼ100年の差がある。

なぜ、バッハは、100年も後の作風を先取りできたのか。。。。。

これから導きだされる答えは立ったひとつ。

つまり、G線上のアリアは「オーパーツ」だったんだ。

(オーパーツとは本来そこに無いはずのものが存在すること、マヤ文明の遺跡から発掘された宇宙ロケットの模型など)

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現代の売れないバンドマン、キーボーディストの青年、ジョナサン。
彼は、ひょんなことから、バロック時代にタイムスリップしてしまう。

所持金もなにもなく、手持ちはビートルズのつまったiPodだけ。

彼はタイムスリップしてたどりついたライプツィヒの街で、冴えない中年男性に手持ちのiPodの曲を聞かせた。

中年男性は、

「なんだい、このHey Judeって言う曲は!なんてすばらしいんだ!こんな曲は聞いたことも無い!ブラヴォー!!!」

と叫んだ、彼こそががヨハン・セバスチャン・バッハ、のちの高名な作曲家バッハその人である。

そして二人は音楽を通じて友人となり、音楽について語り合い、親交を暖めていく。

やがてバッハは病気のため亡くなる。その後、ジョナサンは、バッハの意志を継ぎ、バッハになりかわり、作曲を行うこととなった。

しかし、バッハ本人よりもジョナサンは少し若い。

これでは威厳が出せない。

そう思ったジョナサンは、街で見つけたもじゃもじゃのかつらをかぶることにした。。。。。

これが現代の我々の知るバッハ像の完成である。

そして、もじゃもじゃのかつらをかぶったジョナサンは次々と現代風の楽曲を生み出し発表していく。

ジョナサンの楽曲は現代からしてみれば、しょせんビートルズの真似ごとに過ぎなかったが、これがバロック時代の人々の耳には非常に新鮮に聞こえた、そしてジョナサン、いやバッハの人気は絶頂のものとなっていった。

しかし、それも長くは続かない、ある日ジョナサンは、タイムパトロールに発見されてしまう。

そして、歴史を変えた罪として、すべての記憶を抹消し、現代に送りかえされることとなった。

ジョナサンは元の売れないバンドマンに戻り、さらに同時代の人の記憶からも消された。もちろん、ジョナサンの発表した多くの楽曲も一緒に。

しかし、たった一枚、引き出しの奥にしまわれた一枚の楽譜にタイムパトロールは気がつかなかった。

それは、いかにこの時代でもてはやされようとも、所詮自分は才能がなく、ビートルズのパクリしか出来ない、と自ら理解していたジョナサン自身が、唯一自分で名曲を作れた、と自負していた楽曲である。

それをジョナサンは大切にしまい込んであったのだ。

それこそが「G線上のアリア」である。

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という経緯があったことは間違いない。


Wednesday, April 9, 2014

2050年、トーキョーまで120km

山あいの道を抜けると、大きな通りにぶつかり町らしきところに出た。

ひろびろと開けた平野には、何件かの家が建っているが、ほとんどはもう人が住んでいないらしい。

手入れするもののいない庭はあっというまに荒れ果てて、まるで森のように雑草が茂っている。

道の向こう側、数百メートル遠くに、大きな建物が見える。
近づいてみると、かすれた文字で、看板には「イ・オ・ン」と読める。
数十年前からある大型モールだ。

いまでも営業はしているらしく、何人かが建物に出入りする姿が見えた。

みな老人ばかりだ。でもかろうじて人の生活が感じられる。ここが町の中心だろうか。

道路標識には、、、「東京まで120km」の文字が。

イオンの裏側は駅になっていた。駅といってもとうに電車は廃線になっていて、今は、長距離バスのターミナルになっている。駅舎を改造した大きな待合室が、以前はこの駅も急行が止まる、大きな駅だったことを物語っている。

バスの時刻表を見てみた。いまでは、東京行きは一日に一便あるかないかのようだ。

いまは2050年。私はこうして日本を旅している写真家だ。

2000年代に入り、日本は世界でも類をみない高齢化社会となり、その傾向に歯止めはかからなかった。

いまでは人口の7割が高齢者となっている。

東京や大阪等の一部の都市部を除けば、ほとんどの町で9割以上が高齢者の町となり、人口は著しく減少し、いまや日本はそこらじゅうゴーストタウンばかりである。

2014年頃、日本でも高齢化の進む社会に対して、移民を積極的に入れるべき、という話が持ち上がったが、いたるところで、移民排斥運動が起き、結局日本社会においては、外国人の同化は不可能だという判断になった。

また、東京湾を一部埋め立て、移民を受け入れ、公用語を英語とし、ITと金融特区としよう、という「第二東京プロジェクト」、も一時盛り上がったのだが、結局ことなかれ主義の多い、日本の政府機関にそのような大胆な施策をとれるはずもなく、その話も立ち消えになってしまった。

結局日本が選んだのは、江戸時代に日本がとった政策、「鎖国」だった。

国の門戸を閉じ、緩やかに経済活動を縮小していく、言い換えれば、日本は国として、「静かな死」を選んだのだ。

それが良かったか悪かったかは私にはわからない。

積極的に移民を入れてきたロンドンや、ニューヨークはいまや、移民が9割を越す町となり、経済的には中心では有るが、治安は、最悪の水準となり、元いた住民の大半は外へ引っ越していった。

パリやベルリンはイスラム教徒の町となり、古くからの教会は順にとり壊されモスクへと変わった。
反面、「鎖国」をおこなった日本はどうなったか。

今では、国土の半分以上が無人の地域だと言われる。
私は、日系シンガポール移民の息子として、2020年に生まれた。日本は両親にとっての故郷であり、私にとっても子供の頃から、ずっと話しを聞かされていた第二の故郷である。

「24時間営業のコンビニエンスストアが町のそこかしこを明るくてらし続ける町」

「ロンドンや、ニューヨークと並ぶ、大都会・東京」

ずっとそんな話を聞かされていた。しかし、初めて足を踏み入れた「日本」の姿は、私の抱いていた想像とはあまりにかけ離れていた。

かつて機械や自動車で世界を牽引した国とは思えないほど、産業は衰退し、人々は貧しく、素朴な生活をしている。

そうした町を今こうして旅している。

しかし、街角には小さな稲荷と赤い鳥居が残り、ひなびた日本家屋の町並みはいまだに古来の美しい風情を残している。人の手が入らなくなった、山林地区は一層豊かに森が茂り、鹿や猿等の動物はどんどん増え、無人となった町は少しずつ自然に帰っていく。

豊さとはなんだったか、そんなことを思いながら、わたしはこの旅を続けている。

夕方になり、誰もいない駅舎跡が美しく赤く染まる。ずいぶん遠くへ来た気がする。ここは東京までわずか120キロの町なのに。

かつてにぎやかな団地だったであろう廃墟の公園の前を通りかかった。

ふと子供の笑い声が聞こえたような気がして、振り向いたが、そこには誰もいなかった。

Monday, March 31, 2014

明日はエイプリルフール

明日はエイプリルフール。

あまり知られてないことだが、エイプリルフールはイエス・キリストのこの逸話から来ている。

「イエスは群衆を前にしてこういった。 

『普段嘘をついたことの無い者だけが、今日は特別、嘘をついてもよい。』

 すると、群衆は誰も嘘をつかなかった。」

 だから、普段正直に行きている訳でもない俺が

明日エイプリルフールだからといって、嘘なんてつけるわけないだろ。


そして、この逸話はもちろん嘘だ。

Thursday, March 27, 2014

晴れ時々ミサイル


「今日の天気は、全国的に晴れ時々ミサイルです。」

天気予報が告げる。

それを見ていたママが言う。

「あなたー、今日はミサイルよ、防護スーツはちゃんと着た?」

「ああ、ありがとう、うっかり忘れるところだったよ。あぶない、あぶない。」

と、パパはそんなことをいいながら、銀色の防護スーツに着替える。

「これさえ着てれば、ミサイルも放射能も怖くないからな。

じゃ、カオル、行ってくるよ。いい子にしてるんだぞ」

そういって、パパは、ゆっくりと二重になった玄関のシャッターを開けて
会社に出かけていった。


防護スーツを持ってないわたしは、ミサイルの日は外に出られない。

今日は学校もお休みだ。

「あーあ、つまんないの」

そう思いながら、窓の二重防弾ガラスを通じて外を眺める。

道を歩く人も、鳥や犬や猫の姿もない。動くものは何もない。

時々防護スーツ姿のサラリーマンが、駅へと通勤していく姿以外は。


外は雲ひとつないのに。
空はあんなに青いのに。
私は家から一歩も出られない。

隣の国の狂った軍事用コンピューターはときどきこうやって、
ミサイルを大量に撃ち込んでくる。

決まってこんな晴れた日に。
わたしは遊びに行きたいのに。

十年以上前の戦争のさなか、クーデターで指導者を失い、
なおも続いた動乱で国が荒れ果てた後も
コンピューターだけは動き続けている。

人が入り込めないほど放射能で汚染された無人の基地で、
コンピューターだけが生きていて、

いつまでも戦争を続けてるなんて。

とっても変な話だよね。

前に、パパが話してくれたんだけど、

いまから十年以上も前の話、隣の国から初めてミサイルが飛んできたとき、

それはもう、みんな大パニックになって、

国中大騒ぎになったらしいんだって。

でも、いまではそれも嘘みたいに、みんな慣れっこになってしまったんだって。

「ホントは取り返しのつかないことを人類はしてしまったんだけどね」、ってパパは言ってたけど、

生まれる前のことだし、あたしにはよくわかんないや。


お天気予報のキャスターがまた繰り返す。

「今日は晴れときどきミサイルです」

防護スーツが発明されて、ほぼすべての家がシェルターに覆われるようになって。

いまではミサイルによる犠牲者は一年間の交通事故死亡者よりもずっと少なく、

天気予報の隅っこでときどきその事を意識するだけになっている。


「あーあ、つまんないの」

わたしはこれから始まる退屈な一日を思って、ため息をついてほおずえをつく。

空はあんなに青いのに。
わたしは遊びにいきたいだけなのに。

Monday, March 17, 2014

犬と飛行機

日本語の「月とすっぽん」は

タイでは「犬と飛行機」というらしい。

比べるにしても、犬、と飛行機か。。。

なんだか突拍子も無くて味が有る。

このことわざは、似てるけど、価値の全然違うもの、って意味だっけか。


月とすっぽんは同じ形をしているから、

ついつい他人から勝手に比べられるし、

池の中のすっぽん自体もひょっとして月を見上げて

俺もあんな風に空高くにいければ、と思うのかもしれないけど、

犬は飛行機をうらやましがったりするのだろうか。

少なくとも。

僕は自分の飼い犬を見てお前も頑張って飛行機くらいになれよ、とか思わないし、

犬は犬で飛行機と自分をくらべて、コンプレックスを抱いたりはしないだろう。

犬は犬でたぶん犬暮らしをエンジョイしている。


そういえば、他人と比べることで人の不幸は始まった、とも言うし、

財産とか、能力だとか、だれかをうらやましがってもきりがない。

そう考えると、なにごとも、「月とすっぽん」とか思うよりも、「犬と飛行機」くらいな感覚でいた方が

結構幸せな気もするのです。

Tuesday, March 11, 2014

犬はどこへ逃げた?


「犬が逃げちゃったんだよ、あの角の先にいる」

と家の前で困り顔で立っているおばあさんのそばを通りかかった。

「捕まえるの手伝ってくれないかい?」

ああ、じゃあ、そういうことなら、、とおもって、おばあさんの指し示す方向に探しにいってみるけれど、犬はみつからない。

すると、家の中から「ああ、すみません、、」と家族らしき人が出てきた。

なんでもおばあさんはぼけてしまっていて、いつも「犬が逃げた」と言っているのだとか。

迷惑かけてごめんなさいね、と謝る家族の人たち。

いえいえ、大丈夫ですよ、と答えながら、思った。

さっきの、おばあさんの困った顔はとても、真剣だった。

そりゃそうだ、実際に逃げた犬はいなくても、おばあさんの中では

「かわいがってた犬が逃げてしまった、困った」

という感情がずっと続いているのだから。

でも、そもそも人の心は、だいたいこんな風に不思議に理不尽に出来ていて、
実際に逃げてもいない犬のことを悲しんでいるおばあさんのように、

誰しも、ありもしないことをおそれていたり、
失っていないものを失ってしまった、
と嘆いてみたりしているのかもしれない。

いったい人の心から、犬はどこへ逃げて行くのだろう。



ロマンティック脳のせいで歯が痛い

あたたたたた、

歯が痛くて目がさめる。

左奥歯がずしんずしん、とクる。

虫歯かな?と思い、急ぎ歯医者で検査をしてもらうも、虫歯は無いらしい。

おそらく原因は、噛み合わせということで、すこし削って調整してもらう。

それから2日。やっぱり痛い。

変だなあと思って調べると、
歯痛の場合、虫歯は30%程度でしかなくて、ほとんどが違う原因なのだとか、あとは噛み合わせや、鼻炎により圧迫される痛み、など、
歯医者だけでは、わからない原因も多いのだとか。

それ以外にも昔虫歯だったところがある場合
脳はその痛みを忘れられずに、なにかのストレスの際に、
ふとその痛みを思いだして、痛くなることも有るのだとか。

なんだそれは。

ロマンチックかおまえは。

なんだか失恋の古傷みたいな話をしやがって。

脳も以外とアホだな。

「いつも一緒にいたかった〜歯痛とわらってたかった〜」

プリンセスプリンセスか。

いや、それは遠慮したい。もうむしろ痛みでわらうしかない。

ああ、くそ。そんなアホなことを言っていても、やっぱしいてえ。

今回は虫歯じゃないとしてもやっぱり虫歯は怖い。

だじゃれはそれくらいにして、歯はきちんと磨こう。

だって、

「もう虫歯なんてしないなんて、いわないよ絶対。」

Sunday, March 9, 2014

ローテンション制



とある飲食店の前をとおったらバイト募集の張り紙に

「ローテンション制なので、気楽に働けます!」

そうかぁ。

ローテンションでもいいなら楽だよなあ。

ハイテンションで働くのは結構大変だもんなあ。

「いらっしゃいませ、こんにちわー。」

って連呼し続けるのも結構疲れそうだし。

「、、あ、ども、まいど」

くらいで、気楽に働きたいし。

これからの日本の労働環境はやっぱローテンション制だよ。

きっと、過労死も無くなる。

とか思いながら、張り紙を見ると。

あ、「ローテーション」制なのか。。。。

Friday, March 7, 2014

ピチカートファイブと数学と


数学の博士号を取る為に、

日本に留学してきたスウェーデン人の話。

アメリカの大学をでてるのに、

なんでわざわざ日本に?

まして数学科なら、別の国でもいいじゃないか。

と聞けば

「ピチカートファイブにはまったから」

だそうだ。

「僕の村では誰もピチカートファイブなんて知らないんだ。
でもここではみんなが知ってる。とても嬉しいよ!」

と。

彼は愛するピチカートファイブの国で、数学を学んで、幸せそうでした。

日本は豊かに見えるけど

「日本は豊かにみえるけど自殺者が多いのはなんでだ?」

と不思議そうに僕に聞いたのはタイの実業家。

「そもそも母国語の本なんてないから、英語よむしかないし」

留学経験がないのに英語が上手なミャンマーのエンジニア。

「いや、子供の頃は戦争やっててさ」

とこともなげに言う日本のIT企業で働くボスニア出身のサラリーマン。

ふと日常のあたりまえに気づかされるのは

どうして、いつも外からの視点なんだろう。

そうでもないと、身の回りのことにすら気づくことが出来ないんだろう。

とても間抜けなようで、でも本当はとても幸せな話だよ。


Thursday, March 6, 2014

ジョージ イズ スケベジジイ


知り合いに白髪のアメリカ人がいる。名前はジョージ。

いつも新聞のクロスワードパズルを持ち歩いていて。

年齢は、60後半〜70代くらいかな?
見た目はちょっとダンディなおじいちゃんだ。 

毎日のように、近所のバーに通い、バーに来た女の子にしょっちゅうちょっかいだしたり、 下ネタを言ったり。

でも、ジョージのちょっとダンディな雰囲気と、物珍しさで、あんまり迷惑がっている客もいない。 むしろたいていはおもしろがっている。

愛着をこめてスケベジジイなんてよばれてたり。

僕とジョージは同じバーの常連客という関係で、 たまに、世間話をしたりという程度の間柄。

 、、、、、と思っているのはどうやら僕だけで、ジョージの方は一向にこっちのことを覚えてない。

だから、毎回僕の名前を聞く。

おお、ダイチかよろしくな。

おまえ、英語がうまいな、どこからきたんだ?

え、外国に住んでたんじゃないのか。

じゃあ、あれかガールフレンドはガイジンか?

俺か?俺は日本の女が好きだな。もう日本に40年位いるのさ

なんてお決まりの会話。

うーん、先月も一緒に話したじゃん。

僕はジョージがノースカロライナ出身なこととか、

英会話の先生と俳優をやってて、映画にもでてることとか、

若い頃はアメリカで4人の女性にプロポーズされたけど、 結局選べなくて、いま少しだけ後悔していることとか、

結構いろいろ知ってるよ。 


というと毎回びっくりしたような顔をして、

なんで知ってるんだ?

っと言う。 

ボケちゃってるのかなあ、と心配になるんだけど、 店で話した女の子のことは一発で覚えてるんだから、 やっぱりボケちゃいないらしい。

 本人も自慢げに、

 俺は、女の顔は覚えるけど、男の顔はおぼられないんだ!! 

という。


よかったボケたじいさまはいなかったんだ。 なんて言ってみたりして。


ねえ、でもジョージ。

僕のことは覚えてなくてもかまわないけど、 

もし、ジョージが女の子の顔を覚えられなくなったら、 

ジョージがジョージじゃなくなったみたいで、

たぶんすごく寂しくなるから、

ジョージらしくずっとスケベジジイいてくれよ。

Wednesday, February 19, 2014

ノボさんと猫の話を

最近の世の中と言えば、ちと忙しすぎるんじゃないかね。

そりゃあ、仕事が忙しいのは仕方ないさ、

でも、その隙間にえすえぬえす、だとか、ぶろぐとか、、

そーしゃるげーむとかさ、そういったものが

無理くりはいってきやがる。

おろしや国での運動会のことだとか、偽作曲家のことだとかは、まだいいさ、

あげく、友人がどこで何を食べたとか、いまどこへいるとか、

そんなことにばかりどんどんくわしくなるいっぽうだ。

忙しすぎて、ちいいともものを考える時間なんて有りゃしないじゃないかね。

松山時代が懐かしいなあ、なあノボさん、そうは思わないかい?

————————
ああ、でもあれだな、物を考えないというのはそんなに悪いことじゃないかもしれないねえ。

つねに誰かが答えを用意してくれているし、

変に偏執狂的な考えに悩まれる必要も無い。

とてもとても、気楽にすごせるよ。

あと数年の間に、小説を書くやつなんてもういなくなるかも知れないね。

「将来に対するただぼんやりとした不安」だなんていって自殺した奴が馬鹿みたいだよな。

この世の中でうぃきぺでぃあに乗ってないなら、それは存在しないのといっしょなんだ。そんな漠然とした「不安」なんてさ

なあそうだろう?ノボさん。

おいおい、また咳き込んでいるのかい。

————————

しかし、このにちゃんねるのまとめサイトってのはおもしろいねえ。

時間がいくらあっても足りないよ

ああ、ハっつぁんも熊さんもみんな馬鹿なこといってらあ。

ところで知ってるかい、ノボさん?

でもなそんないろいろ情報ある中で、結構人気有るのが猫の動画らしいよ。

あんな小憎らしい動物のどこがいいのかねえって思うけど、

たしかに、こう頭がいそがしいと猫でもみて、気を休めたくなる気持ちもわからないでも無いよ。

さて、おれもその人気にあやかって次回作にでも使わせてもらおうかねえ。

本当は、芸術のわからんやつらなんぞどうでもいいんだが、
さすがにもう少し売れてくれないと、おまんまの食い上げだよ。

ああ、一応タイトルだけは決めたんだ。

「我が輩は猫である」っと。

Tuesday, January 28, 2014

らくだの処世術


らくだっているじゃない。

人間が砂漠をわたるときに乗るやつ。

あいつって、いつもおとなしく人を乗せているイメージだけどさ。

それでも、威張り散らしたりする人間がいると、わざと振り落としたりするんだって。

そして、人間が起き上がって近づくこうとすると、

すすすっと手の届かないところに逃げて距離を保って、

あの眠そうな目でじっと人を見下ろすんだって。


何も無い砂漠で人間はとても弱いもので、

「あれ?おれこいつにおいてかれたら、死ぬんじゃないか?」

って人間ははじめてそれに気づくんだ。そして、とても怖い思いをする。

で、人間がそれを思い知ったころに、らくだは近づいてまた従順な従者に戻るんだってさ。


そうすれば、今度は人間もえばり散らしたりしなくなる。

きっとその後は、いい旅の仲間になれるんだ。

これが、らくだの処世術なのかもしれないね。

Saturday, January 25, 2014

多数決と正気の間で


「俺が気が狂ってると思うか?」

とある精神病院。

男は多重人格と診断されている。

普段の生活ではさほどおかしいことは無い穏やかな性格だが、彼の中には自分という存在がいくつもあり、
どきどき凶暴になったりするので、扱いかねた家族によってこの病院に預けられた。

血走った目をして男は続ける。

「ヒヒヒ、正気のヤツから狂気のヤツをみると、狂気のように見えるだろ。
それと同じで、狂気な奴から正気の奴をみると狂気のように見えるんだよ。

だから自分がどちらだなんて誰にもわからないんだ。
正気も、狂気も単なる多数決だからな。」

男の言うことも一理あるな、と思う。

確かに誰が正気かなんてわかりはしないのだ。

多数決で決まった物が正気、結局そうルールをつけるしかないんだ。

ふと窓の外からスピーカーでがなり立てる、選挙演説の声が聞こえてきた。 

「われわれはこの国を〜〜&$#*%#!!」

ああ、そうか、もうすぐ選挙だな。


ついてる男

今日は今朝から、どうもラッキーが続いている。 

コンビニで弁当を買い、くじを引いたらもう一個弁当があたってしまい、 右手と左手に、弁当を持ってでてくることになってしまった。

 飲み物でも買おうかと、自販機でペットボトルのお茶を買ったら、 アタリが出て、お茶と、コーヒーを両手に持つはめになった。 

そしてそのままうっかりペットショップにはいって、 いま両手に子犬と子猫を抱えて、すっかり困っている。