Monday, June 16, 2014

犬と神様


「あれ?ここはどこ?」


一匹の犬が周りを見回しながら言いました。


白く奇麗な毛並みの、それでいて鼻だけ真っ黒で愛嬌のある犬です。


「おお、気がついたか、ここは天国じゃよ。そしてわしは神じゃ」


答えたのは杖を持った白髪のおじいさん。どうやら、神様のようです。


「えーおじいさん神様なの!

すごいね!あれ、じゃあ・・・、ひょっとして、僕は死んじゃったってこと??」


「うん。まあ、そういうことじゃ。。。。

じゃが、15年も生きたんじゃし、充分寿命を全うしたと言えるじゃろ。」


「'じゅみょう'ってなに??

よくわかんないけど、そうかー僕は死んじゃったのかー!

びっくりしたなあ、もう!

あ、あそこに、ご主人様がいるね、僕を見て泣いているよ。

ご主人様、そんなに悲しまないで!僕はここにいるよー!」


犬は雲の上から主人を見つけ、そう言いますがもちろん主人には届きません。


「さて、残念じゃが、お前の主人とももうすぐさよならだ。

お前は天国へ行かなくちゃいけないんじゃよ。

ところでどうだ、お前の一生は幸せだったかい?」


神様がそう聞くと、犬は盛大にしっぽを振りながら答えました。


「うん、とっても幸せだったよ!

だってずっと、ご主人様と一緒にいれたんだもの!

生まれてすぐ僕のことを拾ってくれて、それからずっとだよ!

毎日一緒に散歩して、たくさん遊んだよ!!」


「そうか、それはよかった。

しかし、お前たちは不思議な生き物だのう。。。

妙にまっすぐで、愛情に決して見返りを求めようともしない。。。」


「え、’みかえり'ってなに??なんのこと?」


神様は少し考えて答えました。

「見返りというのはじゃな、、、、

うーん、たとえば、人間同士の場合、夫婦でも家族でもな、愛情にはそのお返しを求める物なんじゃよ。

これくらいやってあげたから、相手ももっとこうしてくれるべきだ、みたいにね。

最初は誰もそんなこと考えないんだがね、次第に、心もどんどん贅沢になって、いろんなことになれっこになっていって満足できなくなるんだ。

それで、喧嘩したり、せっかく育っていた愛情を台無しにしてしまったりするんだよ。」


「ふーん、そうなのかー。

人間ってなんだかややこしいんだね。

僕、難しいことわかんないや。

だって犬だから!!

でもね、神様。

僕はやっぱり犬で良かったよ!

だって、難しいことを気にしないで、大好きなご主人様とずっと一緒にいられたからね!」


そう言って、犬は、さらに続けました。


「あ、でも、ひとつだけ残念だな、15年って僕にとっては一生なんだけど、
ご主人様にとっては、ほんの一部分なんだよね。


ほんとは、もっと一緒にいられたら良かったのに。。。。。」


「うーむ、そうじゃな、まあ’寿命'というやつが違うからな。。。

それは、いたしかたあるまい。

まあでも、またすぐお前は、下界に戻って生まれ変わることになってるんじゃよ。」


「え、そうなんだ!

またすぐ生まれ変われるんだね!

次、僕は何になるの!?」


「それは天国ではあかせない約束なんじゃ。

さあ、行っておいで、また幸せになることをいのっておるよ」


「うん、ありがとう!!」


そうして、犬は天国から、また生まれ変わるために下界に下りていきました。


‘ご主人’はこんどもまたやっぱり鼻だけ黒い愛嬌のある別の犬を飼いだして、一緒に暮らすことになります。

それは、犬が天国から下界に下りていって、すぐのことでした。


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