Monday, November 17, 2014

贅沢な朝食

自家製のパンにバター、ただ切っただけの野菜。

それに挽きたてのコーヒー。

なんて贅沢な朝食だろう。

この家では、ミャンマーの奥地から、
ロシアから、そしてタイからやってきた三人のお手伝いさんたちが、それぞれ、パンを焼き、バターを作りコーヒーを挽く。

ミャンマーではエレベーターすら見たことがなかった、というメイドは
いまでは、パンはもちろん、西洋のおしゃれなケーキも上手に焼くようになった。
売れないモデルでもある、ハンサムなロシア人青年は
その太い二の腕で器用にコーヒーを挽く。

なんだか、とても贅沢な朝食だ。

となりには北欧の某国の大使館があって。
そこにはとてもヒステリックな奥様が住んでいて、何人もの使用人を叩き出す、というけれど、高い塀に囲まれた向こう側のことは想像するしかない。

そうだ、となりの家のこともわからないんだから、
ましてこの街のこと、隣の国のこと、世界のことなんて
想像するしかないのだ。

とにかく、こいつはとても贅沢な朝食だ。

Sunday, November 2, 2014

ポジティブちゃん


風の気持ちの良い夕方、部屋の空気を入れ替えようと少し窓を開けたら、ポジティブちゃんが飛び込んで来た。

あわてて逃がそうとしても どこにも行こうとしない。

どうやら迷いポジティブちゃんらしい。

よく見ると怪我もしている。

そのせいで、おそらく目測を誤って俺の部屋に飛びこんできたのだろう。

まあいいさ、ポジティブちゃんは幸せを運ぶっていうし。

しばらく部屋に置いておこう。

そう思って、手近にあったダンボール箱で簡単なケースを作り、ポジティブちゃんを入れてやることにした。

ポジティブちゃんが部屋に来たその日のこと。

大通りで車にはねられて、足の骨を折った。

「これで、慰謝料大もうけポジ!」

ポジティブちゃんは元気に鳴いた。

その通りだ。なんてラッキーなんだろう俺は。

一週間後、ささいな言い合いがきっかけで 彼女が家を出て行った。

「これで新しい女を作れるポジ!」

ポジティブちゃんは高らかにそう鳴いた。

その通りだ。なんて俺はラッキーなんだろう。

そのころには、ポジティブちゃんは傷も癒えたのか、少しだけ、 大きくなったように見えた。

それからというもの、嘘みたいにラッキーが続く。

すばらしく芸術的な絵をローンで買うことができたり、

電車で痴漢に間違えられて、 生まれて初めてパトカーに乗ることができたり。

しまいには、友人の借金の保証人になっていたために 貯金通帳は空になり、家財道具まで全部持って行ってもらうことができた。

何もなくなった、がらんとした部屋で、

「これで泥棒の心配は要らないポジ!」

と、ポジティブちゃんはひときわ元気に鳴いた。

うんうん。ほんとうについてる、ラッキーだ。

 そのころにはさらにポジティブちゃんは大きくなり、もうそのくちばしは猫や犬くらいならひとのみできるんじゃないかと思うくらいのサイズになっていた。

さすがに大きくなりすぎた。

そろそろ逃がしてやらなくちゃ。

自由な空へ。

そう思って俺はポジティブちゃんを箱からだそうと手をかけた。

そこで俺の記憶はぷっつりと、途切れた。。。。。。。

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男がポジティブちゃんのおりを開けようとしたその途端、

ポジティブちゃんはぐわっと突然大きな口を開け、男を丸呑みにした。

「うふふ。僕は君をたくさん幸せにしたよ。さあ、次の人にも幸せを運ばなくちゃ。」

とポジティブちゃんは独り言をいうと、窓からどこかへ飛び出して行った。

仕事もくらしもひとそれぞれ。(ハノイ)



マーク・ザッカーバーグを二回りくらいハンサムにした感じのフランス人、ベン。

フランス、スペイン、アイルランド、マルタ共和国で働いて今ベトナムにいる。
なんで、そうなったの?というと、

「うーん、彼女が転勤多かったからなあ。。。」

ああ、そうか、そういう理由もあるよね。

でも、そういう風に生活に合わせて仕事をころころ変えられるのって、
とても大事なことだよね。

大事なものがなにかというのも人それぞれだし。

でもさ、日本だとそんな風には簡単に仕事はやめられないんだ、
一つの会社に一生勤める人も居るくらいだよ。

「ああ、ヨーロッパでもね、俺たちの親の世代はそうだったよ!でも、今はそんな人、ほとんどいないよ。」

なんてことを、ベトナム名物の春巻き料理をつまみながら
のんびりした口調で話したベンもいつのまにか、
世界に12人の従業員をもつ、WordPressのプラグイン会社経営。

ま、仕事もくらしもひとそれぞれ。