Friday, April 23, 2021

ニュースでショートショート - 大阪府 新型コロナ対策補正予算案 専決処分へ


大阪府が時給を出しアルバイトの見回り隊を雇い店舗をチェックさせて回っているようだ。
飲食店だけでなくエンタメ施設なども対象なのだとか。

ここは大阪の繁華街。

営業中の小さなライブハウスに見回り隊の男がやってきた。

男はニコリともせず事務的にこう言い放った。

「こちら見回り隊です。こちらの店は店舗面積が小さく、密になっているようですね。これでは営業を許可することができません。」

ライブハウスの店主は焦ったように答える。

「そんなこと言われたって、これでも頑張って席を減らしたんですよ。なんとかなりませんか、うちは補助金の対象ではないんです!」

しかし、そんな店主の懇願にも男は表情を一切変えることはない。

「自主的に営業をやめないというなら、府に報告しますよ。あくまで自主なので罰則はありませんが、来年以降の営業許可がおりなくなるかもしれませんよ。」

「見回り」という正義を盾に着た男の冷たい目はなんの交渉も受け付けないように見え、店主は愕然とした。

その強硬な姿勢に店主は翌日店を休業することとした。

「ああ、明日からどうしたらいいんだ、収入もないし。。。」

そこにまた昨日の見回り隊の男がやってきた。

嘆く店主を見て、男は昨日とはうってかわったように温和な表情で店主に言う。

「どうやら、お困りのようですね?もしよろしければ、あなたにぴったりの仕事がありますよ。」

「え、、、、それは、本当ですか?」

「僕ら見回り隊に入りませんか?時給1300で交通費も出ますよ。」

「え、、」

「実はね僕ももともとコロナ禍でやっていた居酒屋が倒産してしまってね。それでこの仕事についたんですよ。一緒にがんばりませんか??」

「そ、そうだったんですか。あなたも、、、かつては私と同じ。。。」

「そうです。さあ、頑張って自粛させましょう!!社会のために!」

「はい!」

こうして二人は連れ立って「見回り」に出かけるのでした。


Tuesday, July 5, 2016

ポピュリズムとAI


参議院選が近いということで、駅前、街角で、あちこちで選挙演説を耳にしますね。

思えば以前は、政治家といえば、強欲そうな顔した汚い親父ばかりというイメージでしたが、最近は随分様変わりしましたね。

フッションもばっちり決まった、美男美女たち、カリスマ性にあふれ、随分堂々としています。

選挙選にはその度華やかなフェスやコンサートも開催され、若い人を熱狂させているようです。

自分が若かった頃は、若者の投票率が問題になっていたもんですけれど。。。。。

今では、若者の投票率も随分高くなりましたね。

ただ、その分、人間が政治政策を決めることはほとんどなくなりました。

政治はいつのまにかAIの仕事になりました。

税率を何%にするか、福祉や教育の優先順位はどうする、外交施策は、
これらのことは、膨大なデータをもとにAIが正確な数字や方針をはじき出してくれます。

現在では自由GOOGLE党と、民進IBMワトソン党との二大政党が、覇権を競っていますが、
社民東芝党などの国産AIも今年は議席を伸ばすかもしれない、というのが、もっぱらの噂。

現在において、政治家の仕事はといえば、AIのはじき出した結果をわかりやすく伝えること。

自然、俳優のような男女が増えるのも自然の流れってところでしょうか。

今は昔の話ですが、英国がEUを突如離脱したり、アメリカ大統領に極端な人物が選ばれたことなんかで、
政治が原因で、様々な大混乱を呼び起こした時期がありました。

当時は、「ポピュリズムの限界だ」なんて、いって批判されてましたよ。

いまは、その時代とはまったく正反対ですね、感情をもたないAIが私たちのことをすべて決めてくれるんですから、

政治と感情は水と油みたいなもんです。

あの頃に比べたら世の中は随分よくなりました。

でも、僕みたいな昔の人間にとってみたら、自分たちで自分たちの幸福を決める権利を手放した感じがして、

ちょっと寂しくはあるのですけれど。。。。。

まあ、これも昔気質のオヤジの戯言ですかね。

Tuesday, October 6, 2015

エコロジスト

伯爵は言った。 

「とにかく私が言いたいのは、 この地球上の資源には限りがある、ということ。

無計画に使い続けたらなくなってしまうのはあたりまえ、 森林は砂漠化し、いつか石油だってなくなってしまう。

人間だって同じだ!!

君たちはあまりに自分勝手すぎるぞ。」

すると、相手の男が口を挟んだ。
おぞましい、醜い顔をした男だ。

 「しかし、オラ達も生きていくためには仕方がなく、、、」

 伯爵は、その言葉を遮り、男に冷たい視線を送って続けた。

 「そもそもだ、お前たちのライフスタイルに問題があるのだ。

だいいち、ゾンビに噛まれたら相手もゾンビになるだろう。

ゾンビが一人の人間を噛む。

そうすると、二日後にはゾンビが4人になる。

三日後には8人のゾンビが誕生ってわけだ。

これじゃあ、 人間なんてあっという間にいなくなってしまうぞ!!」 


「そんな言われても、オラたちだって、 生きていくには食べていかねえと。。。。。。

それに、伯爵、あんただって、同じシステム じゃねえべか、ドラキュラ伯爵。」


ゾンビの男に指摘されて、吸血鬼のドラキュラ伯爵は言葉につまった。

そう、同じことだ、吸血鬼も血をすうことで、増えるのだから。。。 

倍々ゲームであっという間に人間なんて食い尽くしてしまう。

その会話をみていた、もう一人がこういった。 


「へへへ、お二人とも大切な地球資源の人間を勝手に食い尽くすようなまねはよして欲しいもんだね。

俺たちみたいに、共存共栄が一番さ、 エネルギーが必要な昼は人間資源を節約し、夜は活動する。

これこそが未来の本当のエコってもんだね。」 

その言葉に、ドラキュラ伯爵とゾンビの男は、すこし気落ちしたように、

「まあ、そうだな、オオカミ男の言うとおりだ。。。。人間は大切にしないとな。。。」

Saturday, August 8, 2015

ずれてるやつっているじゃない


ずれてるやつっているじゃない。

なんか空気読めなくてさ、みんなの話題にもついてこれねーし。

遊びに誘ってももりあがんないんだわ。
これが。

だからいつも仲間はずれ。
まあ当然だよね。

で、あんまりずれてて、変なやつだから、

どんくらいずれてるかさ、

コンパスで図ってみたんだよ。

そしたら、ちょうど俺らと23.5度ずれてたんだよ。

あれ??

これって、地球の地軸に対する傾きとちょうど同じだけって理科で習ったな。

あれ、じゃああいつのほうが、ずれてないのか・・・・?

ひょっとしてずれてるのは俺らの方だったのかなあ。。。

Monday, November 17, 2014

贅沢な朝食

自家製のパンにバター、ただ切っただけの野菜。

それに挽きたてのコーヒー。

なんて贅沢な朝食だろう。

この家では、ミャンマーの奥地から、
ロシアから、そしてタイからやってきた三人のお手伝いさんたちが、それぞれ、パンを焼き、バターを作りコーヒーを挽く。

ミャンマーではエレベーターすら見たことがなかった、というメイドは
いまでは、パンはもちろん、西洋のおしゃれなケーキも上手に焼くようになった。
売れないモデルでもある、ハンサムなロシア人青年は
その太い二の腕で器用にコーヒーを挽く。

なんだか、とても贅沢な朝食だ。

となりには北欧の某国の大使館があって。
そこにはとてもヒステリックな奥様が住んでいて、何人もの使用人を叩き出す、というけれど、高い塀に囲まれた向こう側のことは想像するしかない。

そうだ、となりの家のこともわからないんだから、
ましてこの街のこと、隣の国のこと、世界のことなんて
想像するしかないのだ。

とにかく、こいつはとても贅沢な朝食だ。

Sunday, November 2, 2014

ポジティブちゃん


風の気持ちの良い夕方、部屋の空気を入れ替えようと少し窓を開けたら、ポジティブちゃんが飛び込んで来た。

あわてて逃がそうとしても どこにも行こうとしない。

どうやら迷いポジティブちゃんらしい。

よく見ると怪我もしている。

そのせいで、おそらく目測を誤って俺の部屋に飛びこんできたのだろう。

まあいいさ、ポジティブちゃんは幸せを運ぶっていうし。

しばらく部屋に置いておこう。

そう思って、手近にあったダンボール箱で簡単なケースを作り、ポジティブちゃんを入れてやることにした。

ポジティブちゃんが部屋に来たその日のこと。

大通りで車にはねられて、足の骨を折った。

「これで、慰謝料大もうけポジ!」

ポジティブちゃんは元気に鳴いた。

その通りだ。なんてラッキーなんだろう俺は。

一週間後、ささいな言い合いがきっかけで 彼女が家を出て行った。

「これで新しい女を作れるポジ!」

ポジティブちゃんは高らかにそう鳴いた。

その通りだ。なんて俺はラッキーなんだろう。

そのころには、ポジティブちゃんは傷も癒えたのか、少しだけ、 大きくなったように見えた。

それからというもの、嘘みたいにラッキーが続く。

すばらしく芸術的な絵をローンで買うことができたり、

電車で痴漢に間違えられて、 生まれて初めてパトカーに乗ることができたり。

しまいには、友人の借金の保証人になっていたために 貯金通帳は空になり、家財道具まで全部持って行ってもらうことができた。

何もなくなった、がらんとした部屋で、

「これで泥棒の心配は要らないポジ!」

と、ポジティブちゃんはひときわ元気に鳴いた。

うんうん。ほんとうについてる、ラッキーだ。

 そのころにはさらにポジティブちゃんは大きくなり、もうそのくちばしは猫や犬くらいならひとのみできるんじゃないかと思うくらいのサイズになっていた。

さすがに大きくなりすぎた。

そろそろ逃がしてやらなくちゃ。

自由な空へ。

そう思って俺はポジティブちゃんを箱からだそうと手をかけた。

そこで俺の記憶はぷっつりと、途切れた。。。。。。。

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男がポジティブちゃんのおりを開けようとしたその途端、

ポジティブちゃんはぐわっと突然大きな口を開け、男を丸呑みにした。

「うふふ。僕は君をたくさん幸せにしたよ。さあ、次の人にも幸せを運ばなくちゃ。」

とポジティブちゃんは独り言をいうと、窓からどこかへ飛び出して行った。

仕事もくらしもひとそれぞれ。(ハノイ)



マーク・ザッカーバーグを二回りくらいハンサムにした感じのフランス人、ベン。

フランス、スペイン、アイルランド、マルタ共和国で働いて今ベトナムにいる。
なんで、そうなったの?というと、

「うーん、彼女が転勤多かったからなあ。。。」

ああ、そうか、そういう理由もあるよね。

でも、そういう風に生活に合わせて仕事をころころ変えられるのって、
とても大事なことだよね。

大事なものがなにかというのも人それぞれだし。

でもさ、日本だとそんな風には簡単に仕事はやめられないんだ、
一つの会社に一生勤める人も居るくらいだよ。

「ああ、ヨーロッパでもね、俺たちの親の世代はそうだったよ!でも、今はそんな人、ほとんどいないよ。」

なんてことを、ベトナム名物の春巻き料理をつまみながら
のんびりした口調で話したベンもいつのまにか、
世界に12人の従業員をもつ、WordPressのプラグイン会社経営。

ま、仕事もくらしもひとそれぞれ。